1. 司法書士法人ジェネシス WEST
  2. コラム
  3. 相談・解決
  4. 闇金に返還請求をすることは可能か検証・注意点を解説

闇金に返還請求をすることは可能か検証・注意点を解説

相談・解決

「闇金に支払った資金を取り戻す方法がないか知りたい」
「闇金に返還請求をしたい」

闇金に多額の資金を支払ってしまい、返還請求をしたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、闇金に返還請求をすることは可能であるか、闇金から資金を取り戻す方法、闇金に返還請求をする際の注意点などについて説明します。

闇金に返還請求は可能であるか

闇金は一般的に法外な高利を設定しているため、支払ってしまった方の中には「なんとか取り戻せないものか」、と考える方もいらっしゃると思います。しかし、違法な闇金業者に対して、法的に返還請求は可能なのでしょうか。
以下では、闇金に返還請求をすることは可能であるかについて検証します。

過払い金請求は可能か

TVCMなどで「払いすぎた利息が戻ってくる!」といったフレーズを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

過払い金請求は、現在の貸金業法・出資法で定められた法定金利の上限(15~20%)以上の利息を支払ってしまった方に対して、利息の差額を返金するシステムです。なぜこのようなギャップが生じてしまったかと言えば、2010年の貸金業法・出資法の改正以前には、貸金業法と出資法の上限金利はそれぞれ異なっており、高い方(出資法:年利29.2%)と低い方(貸金業法:年15~20%)の間の利息(15-20%~29.2%)は、法的に合法か違法か定まらないグレーゾーンとして扱われていたからです。
複数の貸金業者やクレジットカード会社が、この差を都合よく解釈し、グレーゾーン金利での貸付を行っていました。
こうしたグレーゾーン金利での貸付を行っていた正規の貸金業者に対し、過払い金請求をすることは可能です。

では、確実に違法な金利で貸付を行っている闇金業者に対し、過払い金請求をすることはできるのでしょうか。
この問いには、はっきりイエスともノーとも答えられません。法的には過払い金が発生している以上、過払い金請求は可能であると考えられるのですが、主な問題点として以下の3つが挙げられます。

  1. 違法な闇金業者が過払い金請求に応じる可能性は低い
  2. 過払い金請求をするためには専門家に依頼する必要がある
  3. 過払い金請求の報酬は成功報酬となるため、1.の理由から、闇金に対する過払い金請求を引き受けてくれる専門家はまず見つからない

こうした事情から、闇金に対して過払い金請求を行うことは難しいでしょう。

闇金に対する過払い金請求については、以下の記事で説明していますので、詳しく知りたい方は併せてご参照ください。

違法性からの返還請求の可能性

闇金は貸金業登録を行わずに、法外な高利で貸付を行う違法業者です。そのため、法的には貸付契約自体が無効であり、利息はもちろん元本すら返済義務はないとされています。
こうした違法性を指摘することで、返還請求ができる可能性はあります

最高裁判決で損害賠償として返還請求が認められた例も

闇金にまつわる裁判として有名なものに、2008年の指定暴力団山口組系五稜会系の闇金業者に対し、被害者が損害賠償を求めて争ったものがあります。この裁判において、最高裁は闇金の貸付契約は公序良俗に違反し無効であるとし、被害者が闇金に支払った利息・元本を含めた金銭全ての損害賠償請求を認めました

以前には、警察に相談に闇金被害を訴えても、「自分で借りたのだから返しなさい」と言われることや、法律の専門家に相談しても「元本返済による和解」を勧められるケースが多かったようですが、この判決以後、「闇金には元本すら返済しなくて良い」ということが周知されました。

時間も資金もかかる

上記の例から、「では自分も裁判を起こして返還請求をすればお金を取り戻すことができるのか」、と思われるかもしれません。

それは可能かもしれません。ただ、このような裁判を起こすことは資金も時間もかかります。ことによると、被害額以上のお金がかかるかもしれません。
そうしたハードルを押してでも返還請求をしたいと考えたとしても、別の問題もあります。

実態のわからない闇金への返還請求は難しい

いわゆる090闇金やLINE闇金のように、携帯電話やSNSのIDと振込先しか分からない闇金へ返還請求を行うことは難しいでしょう。

ヤミ金融対策法の施行や貸金業法の厳格化により、最近の闇金業者は警察に逮捕されることを避けるために、携帯電話や返済口座についても他人名義のものを利用しています。そのため、利用者が知りえる情報から闇金の経営者にたどり着くことはまず不可能です。どこの誰とも知れない人間を訴えることはできません。

上記のことから、闇金へ返還請求をすることは難しいのが現実です。しかし、闇金に支払ってしまったお金を取り戻す方法がないわけではありません。

闇金から資金を取り戻す方法

闇金に返還請求をすることで、支払ってしまった金を取り戻すことは難しいですが、闇金から資金を取り戻す現実的な方法は存在します。それは、振り込め詐欺救済法による返還です。

闇金被害にも振り込め詐欺救済法が適用される

振り込め詐欺救済法は、いわゆるオレオレ詐欺を代表とする特殊詐欺の被害者の被害を救済するために定められた法律です。正式名称を「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」といい、2006年12月に成立、2008年6月に施行されました。振り込め詐欺救済法は、振り込め詐欺等の犯罪被害に遭った被害者が資金を振り込んだ銀行口座を凍結し、その口座の残高から被害者に対し被害額を返還するというものです。

闇金被害は、この振り込め詐欺救済法の適用対象とされています。
振り込め詐欺救済法を利用すれば、闇金に支払ってしまった資金を取り戻すことができる可能性があるのです。

振り込め詐欺救済法の詳しい流れなどについては、以下の記事で詳しく説明していますので、ご参照ください。

振り込め詐欺救済法のメリット・デメリット

振り込め詐欺救済法には、大掛かりな裁判などを行わずに資金を取り戻すことができる可能性があるというメリットがあります。銀行と警察に連絡をする必要はありますが、専門家に依頼する必要はないため、余計な費用も掛かりません。

デメリットとしては、口座の凍結後から名義人の権利の消滅までの手続きに60日程、預金保険機構のサイト上に資金分配申請受付の公告を行う期間が30日以上と、資金分配まで時間がかかることと、口座の残高から支払われるため、口座の残高や被害者が大勢いる場合などは返還額が少ない、もしくは全く返還されない可能性があることが挙げられます。

また、現時点で闇金業者から取り立てや嫌がらせをされている場合は、それらの行為が止むといった効果はありません。返済口座が凍結されたところで、新たに別の口座を指定してくるだけでしょう。
返済を止めたい場合は、法律の専門家に相談する等、別の対策を行う必要があります。闇金の取立て対策については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご参照ください。

振り込め詐欺救済法が利用できないケース

闇金を利用していたのが数年前など、時間が経っている場合は振り込め詐欺救済法を利用するのは難しいかもしれません。
闇金の利用する口座は、被害者の通報などによって頻繁に凍結されます。それに備えて、闇金業者は複数の銀行口座を持ち、使えなくなった口座は使い捨てていきます。
そのため、少しでも時間が経ってしまうと、振り込んだ口座が凍結されるなどして消滅している可能性があります。振り込んだ口座が存在しないのでは振り込め詐欺救済法は利用できません

また、他の被害者によって、すでに振り込め詐欺救済法の手続きがなされていた場合、公告期間内に申請しなければ、返還さる権利はなくなってしまいます。

闇金に返還請求をする際の注意点

上述してきた通り、闇金に返還請求を行うことは容易ではありませんが、もし行う場合は以下の2点に気を付けるようにしましょう。

必ず専門家に依頼する

闇金業者に対し、返還請求をする際は、自力で行おうとはせずに必ず専門家に依頼するようにしましょう。
法的に正しいことを主張したとしても、何の実行力も持たない素人では、闇金業者が相手にすることはないからです。
また、闇金業者の多くは反社会的勢力と何らかの繋がりがあるといわれています。それでなくとも、相手は違法行為に躊躇がない犯罪者集団です。むやみに挑発することは、危険な行為といえるでしょう。

関わらない方がいいケースも

返還請求を行うことで、完済して関りがなくなっていた闇金業者から、再度取り立てを受けるようになったというケースもあります。

「返還して欲しい」といっているのに、逆に返済しろと請求されてしまうのは全く意味が分かりませんが、相手はヤクザまがいの犯罪組織です。どのような難癖をつけられるか分かりません。

闇金に対する返還請求は行ったとしても成功する確率は低いのが現実ですので、支払ってしまった金額にもよりますが、せっかく疎遠になっている闇金業者へ自ら絡みに行く行為は止めた方が良いかもしれません。

まとめ

今回は、闇金に返還請求をすることは可能であるか、闇金から資金を取り戻す方法、闇金に返還請求をする際の注意点などについて説明しました。

闇金に返還請求をすることは不可能ではありませんが、返還される可能性は低いのが現実です。闇金の被害についても振り込め詐欺救済法が利用できますが、それもどれだけの資金が返還されるかは未知数です。闇金の借金には法的な返済義務はありませんが、闇金に一度支払ってしまったお金を取り戻すことは難しいです。
現時点で闇金に返済中の方は、闇金対応を得意とする法律の専門家に相談した上で、返済を止めることをおすすめします。

我々ジェネシスWESTは、闇金業者への対応経験豊富な司法書士と元警察官が力を合わせて闇金トラブルを解決する司法書士事務所です。相談は無料で、着手金については後払い・分割払いにも対応しています。24時間・年中無休で受付しておりますので、闇金トラブルでお困りの方は、一人で悩まずにぜひ一度ご相談ください。