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解決方法が無いってほんと?白ロム詐欺の対応策について知る

闇金の手口

生活費に困ったような事があったり、借金の返済に困っていたりするような場合に、いろいろな金策方法を考えますが、その中で「携帯電話を契約してきてもらって、本体だけ送ってください」という白ロム詐欺というものがあります。

「詐欺にひっかかったような場合には私は被害者でしょ?」と思うかもしれませんが、実は本当の被害者はあなたではない、というのはご存知でしょうか?このページでは、白ロム詐欺の対応についてお伝えします。

白ロム詐欺とは何か

まずは白ロム詐欺というものがどういうものか知りましょう。

白ロムとは

白ロムとは、SIMカードが入っていないスマートフォン端末で、別のSIMカードを挿入すれば利用できるもののことを言います。

スマートフォンは、スマートフォンの機体に携帯キャリアのSIMカードをさして利用をします。SIMカードには契約に関する情報が書き込まれており、それをスマートフォン本体が読み込むことによってスマートフォンは携帯電話として、また通信端末として利用できるようになります。

初めて購入するときには、スマートフォン本体とSIMカードを渡されることになっており、新しい機種が出たときには、従来の端末からSIMカードを取り出して新しい端末に差し込めば、新しい端末での利用ができることになっています。

白ロム詐欺とは

白ロム詐欺というのは、特定の人に携帯キャリアの会社と携帯電話購入の契約をさせた上で、SIMカードを抜いた白ロムを送らせて、何らの支払いもしないというものです。

白ロム詐欺を行う者は、ホームページを作ったり、ダイレクトメールやショートメッセージを利用したりして、相手に「白ロムを買い取ります」「白ロムを契約して送ってもらうバイトです」といったようなアプローチをします。

また、貸金業者のふりをして融資を申し込んできた人に対して「今のままでは融資をすることができないが、携帯電話を契約してきて送ってくれたら融資が通りやすくなる」といった形をとることもあります。

当然携帯電話を契約すると、電話代等の支払いが発生するのですが、そういったものについては「後で解約すれば払う必要はない」と説明をします。携帯電話については、契約を誘引するために機種を無料で提供しているため、このような事を知った人が、お金目当てに家電量販店や携帯会社で端末を契約して本体を集めて、詐欺師に送ってしまうのです。

そして、機体は回収されてしまった上で返ってこない、約束したお金は振り込まれない、携帯の契約が残るという事になり解約もできず、という状態になってしまうのが白ロム詐欺ということになります。

詐欺師はどうして白ロム詐欺を行うの?

詐欺師はどうしてこの白ロム詐欺を行うのでしょうか。

白ロムは中古品販売業者が買い取ります。今すぐ契約できる機種であれば、高値で販売することができ、手に入れた白ロムを中古品販売業者に買い取らせて利益を得ることが目的なのです。

白ロム詐欺にひっかかる人の特徴は?

この白ロム詐欺にひっかかる人にはどのような特徴があるのでしょうか。

そもそも、どうしても今すぐお金が必要であるというような場合には、消費者金融・銀行から借入をする、信販会社から発行されているカードを利用する、などといった事が考えられます。

このような方法でのお金の調達のほうが圧倒的に楽なのにできないのには理由があります。消費者金融や銀行・信販会社の利用にあたっては信用情報という個人の借金の状況などの信用に関わる情報を参照して与信を行います。自己破産などの債務整理を利用したことがあったり、2か月以上の延滞があったりするような場合には、事故情報としての情報が登録されることになります。

そうすると、住宅ローンや自動車ローンも含めた借入ができなくなり、このような状態のことを「ブラックリスト」と呼んでいます。このような状態になると、後述する方法以外では資金調達が事実上難しくなるため、お金を作る必要に迫られたときに、いろんな情報を探し回る中で白ロム詐欺にひっかかってしまうのです。

お金が無いのに詐欺にひっかかるのか?と思うかもしれませんが、白ロム詐欺は「お金を払ってください」というものではなく、0円で手に入るスマートフォン本体を送ってください、というもので、詐欺師側からも「お金はかからないですし、ノーリスクです」という説明がされます。

白ロム詐欺にあったらどうなる

ではこの白ロム詐欺にあった後にはどのようになるのでしょうか。

携帯キャリアとの契約は?

まず考えるのは言われたとおりに携帯を解約することができるのか?という事ですね。機体が0円で購入できるスマートフォンを購入する際には、2年間は契約を続けることが前提になっており、その期間の途中で契約を解除等する場合には違約金9,500円の支払いをすることが義務になっています。

また、携帯電話本体の費用は別で支払う必要があります。これについて、「白ロム詐欺に騙された」という主張をしても、代金の支払い義務が消えるわけではありません。

費用が支払えないといわゆるブラックリストの状態になり督促が始まる

費用が支払えれば良いのですが、この費用が支払えない場合にはどのようになるのでしょうか。

携帯電話の代金の支払いについても信用情報への事故情報の登録がされることになっているため、いわゆるブラックリストの状態になってしまいます。また、支払えない場合には債権回収の対象となります。携帯電話の会社の債権回収の部門がある場合にはそこから電話や手紙が届くようになります。

その会社に債権回収の部門がなかったり一部を外部に業務委託していたりするような場合には、サービサーと呼ばれる債権回収会社や少額の債権回収を専門にしている弁護士の事務所からの電話や通知が届くことになります。長期間放置すると当然ですが裁判の対象になることになります。

詐欺師に裁判をして取り戻すことは事実上不可能

では、詐欺師相手に裁判をして白ロムを取り戻そう!と思う方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、法律上は取り返すことができる請求権を持っています。しかし、実際に裁判を起こすためには、相手の氏名・住所などを特定して、住民票や会社の場合には登記簿謄本を取得してくる必要があります。

当然ですが、詐欺師がこれらを本当の名前で行っているはずがありません。もし本気で探すというのであれば、探偵を雇って調査をしてもらうという形になりますが、詐取された携帯電話以上の費用がかかることが予想される上に、そもそもこういった特殊詐欺は痕跡を残さないように精緻にされていることが通常で、まず証拠をつかむのが難しいです。

そのため、民事訴訟を起こして被害を回復するという選択肢自体が事実上不可能と言わざるを得ません。

なお、なんらかのきっかけにより警察が詐欺師を逮捕できたときには、詐欺師が刑事事件で情状酌量により刑を軽くしてもらうための行動として、被害を弁償してくることはあるのですが、逮捕されること自体が稀な上に仮に逮捕されても被害者の数次第では詐欺師の側で被害回復のために弁償できる金額にも限りがあるため、全額の回復は難しいといえるでしょう。

白ロム詐欺で債務を負った場合には債務整理を考えよう

白ロム詐欺で携帯代金の支払い義務を負って、払えなくなってしまったような場合には、債務整理を検討しましょう。

債務整理とは払えなくなった債務から生活を再建するための手続き

債務整理というと消費者金融や銀行で借金をした人が利用する手続きというイメージかもしれませんが、借金を含めた広く支払い義務である「債務」がある場合に生活再建を目指して借金に対する手当をすることをいいます。

債務整理は自己破産・個人再生・任意整理などの個別の手続きの総称をいいます。それぞれ詳しくみてみましょう。

任意整理

任意整理というのは個々の債務者と債務の返済に向けて話し合っていく手続きの事をいいます。

白ロム詐欺にかかった債務しかないような場合には、個別の会社への支払いが10万円以内となることが通常なので、任意整理は向かない手続きであるといえますが、他に消費者金融の限度額まで借入をしているようなものがあるのであれば、そちらだけ任意整理をすることは可能なので、検討対象にすること自体は悪いことではありません。

自己破産

自己破産とは、裁判所に申し立てを行って借金を含む債務をすべて免除してもらう手続きのことをいいます。

白ロム詐欺の対策が必要になっているような場合には、他にも債務がたくさんあり支払いきれていない場合があります。大きな債務者のみであれば任意整理により支払いが軽くなる可能性は高いのですが、支払いをしなければならない件数があまりにも多い場合には、支払いが全く回らないという事もあり得ます。

他の二つの手続きと違って、借金の返済義務から解放される自己破産は、お金の面で失敗した場合にやり直しをするための一番の近道であるといえます。

なお、白ロム詐欺にあったような場合には、換金行為として免責不許可事由がある場合であるといえるので、裁判所から特別な許可を得る裁量免責をしてもらうように動く必要があります。

そのため、借入の事情が病気や怪我などのいたしかたないものであったとしても、少額管財という手続きによって、管財人という裁判所から選任される人によって、裁量免責をするのに相当かどうかの調査を受ける必要があります。

きちんと手続きに協力している限り裁判所からの裁量免責をもらえないということはありませんので、管財人・弁護士・裁判所との連絡をしっかりして手続きに協力をするようにしましょう。

個人再生

住宅ローンを利用して自宅を持っているような場合や、宅建士・警備員などの特定の資格を利用して仕事についているような場合には、自己破産手続きを利用すると自宅を失う・仕事を失うということになります。

そこで、このような場合にも利用できる法的な借金整理手続きとして個人再生があります。債務を債務額によって1/5程度の減額をしてもらって、残った額を分割して支払うことになります。

この手続きによると、住宅ローンだけを外して債務整理をすることができるので自宅を維持することができます。また、自己破産をするわけではないので職業も失いません。白ロム詐欺にあったからといって自己破産手続きのように免責不許可になるようなものもないという特徴があります。

闇金の処理

白ロム詐欺のような切羽詰まった金策を必要としている人の中には、闇金から借りているような場合もあるでしょう。中には、返済の一環としてSIMカードを入れたものの提供を要求される場合もあります。

闇金に関しては、犯罪ですので法律上支払う義務はないのですが、とはいえ家族・職場・夫婦の一方に電話攻撃を一方的に行うなど非合法な取り立てを行います。警察は民事不介入という態度で取り合ってくれなかったり、ある程度親身な警察でも目の前で闇金に電話をしてくれたりする程度のもので根本的な解決になりません。

債務整理を得意とする弁護士・司法書士の中でも闇金への対応まできちんとやってくれるところは数が少なくなってしまいますが、対応をしてくれるところであれば、タフな交渉と銀行口座や携帯電話の停止などの手段を駆使して被害を最小に食い止めてくれます。

どうしてもお金が必要な時に使いたい制度

白ロム詐欺にひっかかるくらいにお金に切羽つまっている、そんな時に知っておいて欲しい、あまり知られていない2つの制度をご紹介します。

生活福祉資金貸付

厚生労働省が行っている貸付の制度に「生活福祉資金貸付」があります。「貸付といっても私は信用情報がブラックなので借りられない…」という疑問を持った方もいらっしゃるかもしれませんが、この制度は信用情報に関係なくお金が借りられる制度です。

国が自立的な生活を支援する目的で行うもので、民生委員と協力をして生活全般を立て直していく一貫として、生活に必要な資金の貸付を受けることができます。

これには生活費として必要なもの・住居確保のための費用・医療費・介護など最低限のもののみならず、教育や就職準備といったものまで生活を続けていくために必要となる資金についての借入もすることができます。

貸付にあたっては民生委員の面接を受けたり審査が必要になったりしますので(緊急小口資金を除く)、必要になりそうであれば早めに行動をするようにしましょう。

年金担保貸付

もう一つは、老齢年金や障害年金の受給をしている方が利用できる貸付の制度として、年金担保貸付があります。

年金担保貸付というと基本的に禁止されているものなのですが、独立行政法人福祉医療機構が運営しているものは法律で認められている唯一の例外です。年金受給権が担保になっているので、与信の必要がないので、ブラックリストでも借入ができるものです。

こちらも保険・医療、介護・福祉、住宅改修、冠婚葬祭、生活必需物品の購入などの支出のために一時的に小口の資金が必要に応じた目的で利用ができるようになっています。取り扱いは銀行・信用金庫で「独立行政法人福祉医療機構代理店」という記載がある窓口で取り扱っています。

借入には審査があり、審査は1ヶ月程度かかるのでこちらも早めに行動するようにしてください。

生活保護なども視野に入れる

以上のような制度がありますが、借入であるという性質がどうしてもついてまいります。そもそも病気や怪我が原因で仕事ができず、収入を得る術がないような状態ならば、やはり生活保護は必ず念頭に入れておいてください。

こちらも、本来であれば窓口に申請をして財産等の調査の結果正当であれば給付を受けられるべきなのですが、問題視されているとはいえ今でも申請に対して諦めさせるような対応をする「水際作戦」が利用されていることもあるので、利用を考えた場合には早めに行動するようにしましょう。

生活保護以外にも、フードバンクという食料を無料で手に入れることができる機関や、公的な機関のみならず各種団体による支援など、生活が立ちいかなくなったときに利用できる制度はあまり知られていませんがたくさんあります。白ロム詐欺のような安易な資金調達に頼るのではなく、生活を立て直すことを役所に相談をしに行ってみることも考えておいてください。

まとめ

このページでは、白ロム詐欺の実態や解決方法、どうしてもお金がないときに活用したい制度などをお伝えしてきました。

事実上、被害にあってしまってから端末を取り戻すということは不可能であるといえるので、対処としては被害にあった後のキャリアに対する支払いにどう向き合うか、という事になります。

今おかれている状況に応じて債務整理・闇金対処・生活福祉資金の利用など、自分にあった方法としてどのようなものがあるのかを専門家に相談するようにしましょう。