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偽装質屋とは?業者の危険な手口や事例、トラブルを対処する方法

闇金の手口

「急な出費のために質屋からお金を借りたい」
「正規の質屋と偽装質屋の違いが気になる」

高齢者を狙って利益を得ようとする闇金が多い今では、偽装質屋によるトラブルが増加しています。利用者から価値があまりない質草を回収して、違法な金利でお金を貸し付けるのが偽装質屋の特徴。

本記事では年金を受給している高齢者が注意すべき、偽装質屋の手口やトラブルの対処法について解説します。

偽装質屋の危険な手口とは

質屋を装って利用者にお金を融資して、高額な利息を徴収するのが偽装質屋です。違法に貸金業を営む闇金業者が偽装質屋を営業することが多く、収入の少ない年金生活者がターゲットになる傾向。

正規の質屋でお金を借りる場合、まずは利用者が担保になる質草を質屋に提出します。そして質屋は預かった質草の価値を査定して、価値に見合った分だけ利用者にお金を融資。

返済期限は原則として3か月であり、利用者は期限以内に元金と利息を返済することで質草を取り戻すことが可能です。もし返済期限を過ぎてしまえば、質屋に預けた質草は返ってきません。

一方、偽装質屋では質草の価値に関係なくお金を融資して、利用者に借金をほぼ強制的に返済させます。トラブルを避けるために偽装質屋の危険な手口について詳しく見てみましょう。

偽装質屋は担保として物品を預かる

質屋営業法では上限金利が年109.5%と決められていて、質屋を装うことで高額な利息を徴収できます。そこで利益を求める闇金業者が偽装質屋を営み、利用者をチラシやビラで集客。

実際にお店へ利用者が訪れたら、質屋の形式を守るために利用者から質草を回収します。ただ、偽装質屋では質草が担保の役割を果たさなくて良いため、価値のない品物を利用者が預ける傾向です。

もし利用者が質草を持っていなければ、「100円ショップで何か買ってきて」と業者が指示する場合がよくあります。質屋を装って高利貸しするために物品を預かるのが偽装質屋の特徴です。

返済のために通帳や印鑑を要求

偽装質屋では利用者に借金を返済させるために、銀行からの自動引き落としを要求します。例えば年金を受給している高齢者が偽装質屋を利用した場合、以下の物を偽装質屋が回収する傾向です。

  • 通帳
  • 印鑑
  • 年金手帳

価値のない質草を担保にお金を融資できるのは自動引き落としで元金や利息を徴収できるため。たとえ利用者が質草を手放したとしても、偽装質屋は質流れを認めずに返済を要求します。

利用者に高い利息で融資

貸したお金を回収できるようにしたら、偽装質屋は利用者に数万円から数十万円のお金を貸し付けます。

違法な偽装質屋が法律を守ることは少なく、法外に高い金利で利用者に融資する傾向です。

例えば、偽装質屋と同じく違法な高利貸しを営む闇金では以下のような利息を請求するパターンがよくあります。

  • 10日1割:金利は年365%から3142%
  • 10日2割:金利は年730%から77545%
  • 10日3割:金利は年1095%から1441791%

ただ、偽装質屋では警察からの摘発を防ぐため、年109.5%の上限金利で利息を請求するパターンもあること。質屋を装うことで高い金利を正当化するのが偽装質屋の手口です。

完済するまで口座からお金を回収

偽装質屋は口座引き落としで返済させる場合が多く、利用者が完済するまでお金を取り続けます。例えば年金生活者が偽装質屋からお金を借りると、受給日のタイミングで強制的に返済させられるのです。

口座から資金がなくなれば生活できなくなり、足りないお金を補うために利用者は偽装質屋で借金を繰り返します。利用者の借金を増やし続けて利益を得るのが偽装質屋の目的です。

偽装質屋の逮捕・被害事例

年金生活者を狙った偽装質屋によるトラブルは2013年頃から話題となり、過去には違法業者が逮捕された事例があります。詐欺被害を防ぎたい人が見ておくべき偽装質屋の事例は次の3つです。

年165%の違法な利息を要求

2013年5月頃、福岡県警は質屋を偽装した違法業者の社長など4人を逮捕しました。親子で2つの違法業者を経営していて、福岡県内をメインに70億円以上のお金を9,600人以上の利用者に融資。

例えば2012年6月から10月に容疑者らは年金生活者など5人に価値のない質草で合計21万円を貸し付けました。そして法定利息の約8千円を超える4万円程度の利息を利用者から受け取っていたのです。

この業者は年124%から165%の金利で利息を請求していて、質屋営業法の上限金利を超えていました。多くの年金生活者にお金を貸し付けて、容疑者らは数十億円の利益を回収していたと推測されています。

参考:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG3001D_Q3A530C1CC0000/

価値のない担保で4億円を貸し付け

2013年11月頃、警視庁は質屋を装ったチェーン店「質のひょうたんや」の経営者など5人を逮捕しました。2011年10月から無登録で貸金業を経営して、容疑者らは違法な高金利でお金を貸し付けていたのです。

実際に中野区の男性など7人に合計約420万円を年利50%から300%で融資。「質のひょうたんや」では無価値な物品を預かり、返済しない利用者には借金を取り立てていました。

北区にある本店で年金生活者など1,200人に4億円以上を違法に貸し付けていたことが推測されています。実店舗がある質屋であっても合法な業者とは限らないため注意しましょう。

参考:https://npn.co.jp/article/detail/87450261/

自動引き落としで質屋が年金を回収

日本共産党では偽装質屋の被害にあった70代女性の事例を掲載しています。埼玉県に住む年金暮らしの女性は親戚の葬儀に出席する費用を用意するため、とある質屋に電話しました。

質屋からは「質草は何でもいいから持ってきてくれ。預金通帳と印鑑も一緒に。」と指示されて、女性は古い腕時計を2つ持ってお店に訪問。

お店にいた担当者は物品を鑑定せずに4万円を貸し付けて、女性に自動引き落としの書類に署名させました。そうして年金受給日になったとき、質屋から利息を含めた50,800円を徴収されたのです。

女性がお金を借りていた期間は48日間であり、年207%の高金利でお金を借りたことになります。融資を受けるのが難しい高齢者を相手に、偽装質屋は悪質な手口で高額な利息を請求するのです。

参考:https://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-04/2013050401_04_1.html

偽装質屋に騙されないためには

違法な偽装質屋は違法な金利で貸し付けて、口座引き落としなどで借金を返済させます。

偽装質屋に騙されて生活に必要なお金を失わないためには、以下にある4つの項目を参考にしましょう。

  1. お店のプレートを確認
  2. 自動引き落としを拒否
  3. 「質草は何でもいい」に注意
  4. 質屋の長期利用を避ける

それぞれの項目について詳しく解説します。

お店のプレートを確認

国内には質屋営業法による規制があり、質屋営業許可を受けることで合法的に質屋を経営できるものです。正規の質屋では営業許可を示すため、以下のようなプレートを店舗に設置しています。

「〇〇(都道府県)公安委員会許可 第□□□□□号(登録番号)」

もし公安委員会によるプレートがなければ、そのお店は偽装質屋である可能性が高いです。違法な質屋に引っかからないために、お店に訪問したときはプレートに注意しましょう。

自動引き落としを拒否

正規の質屋では利用者の銀行口座から自動引き落としで返済させることはありません。もしお金を借りるときに自動引き落としの書類への署名を求められたら、融資を拒否することが重要です。

自動引き落としを避けることで高額な利息の返済を防ぎ、生活に必要なお金を取られずに済みます。

もし自動引き落としに署名してしまったときは、受給口座を変更するために早めに年金事務所へ連絡しましょう。年金を受け取る口座を変えることで自動引き落としを防げます。

「質草は何でもいい」に注意

偽装質屋の多くは利用者を増やすために、価値のない質草であってもお金を貸し付けます。中には「どんな質草でもOK」とチラシに掲載して、収入の少ない高齢者を勧誘する場合もあること。

「質草は何でもいい」と業者が言う理由は質草に関係なく高金利でお金を融資できるため。あくまでも質草は質屋の形式を守るための道具であり、本質的には闇金とあまり変わりません。

質屋を利用したい人は預けた質草に対して明らかに高額なお金を貸してくれる業者に注意しましょう。質草の価値に見合わない金額の融資を受けてしまうと、取り立てや口座引落の被害にあうリスクがあります。

質屋の長期利用を避ける

質屋の上限金利は銀行や消費者金融に比べて高く、借金の期間が長くなるほど返済負担が重くなります。例えば上限金利で質屋からお金を借りると、1年間で元金以上の利息が発生するもの。

どうしてもお金が必要なときだけ質屋を利用し、なるべく早めに借金を返済することがオススメです。もし短期間で借金を返済できない場合は質流れを検討しましょう。

偽装質屋の被害にあった場合の相談先

偽装質屋は巧妙な手口で高齢者を騙すため、気をつけていても詐欺被害にあう可能性は十分あります。もし偽装質屋の被害にあったときは国民生活センターまたは法律事務所に相談しましょう。

国民生活センター

独立行政法人国民生活センターは消費者が困ったときに相談できる窓口です。営業時間内であれば電話またはメールによるお問い合わせで生活センターの担当者と無料相談できます。

また、ホームページに掲載されている相談事例には専門家からのアドバイスが掲載されていて、トラブルの対処法について確認できるのがメリットです。

参考:http://www.kokusen.go.jp/

法律事務所

多額の借金を抱えている人や業者からの取り立てに悩む人にオススメなのが法律事務所です。法律知識のある専門家と相談することで、自分の返済額を減らしたり取り立てをやめさせたりできます。

生活に必要なお金を調達できるよう、専門家がさまざまな制度を紹介してくれるのもメリット。借金や生活苦で悩んでいる人に法律事務所でのご相談をオススメします。

まとめ

高い上限金利のために質屋を装い、年金生活者や高齢者に違法な金利で融資するのが偽装質屋です。営業許可のプレートや自動引き落としの有無で偽装質屋は簡単に見分けられます。

高額な利息を徴収されて生活できなくなることを防ぐために、悪質な偽装質屋の利用をするのはやめましょう。